
相場の参加者には大きく分けて二種類あるのは分かっているな。
実需と投機だね。


そうだ。
あんがい、この二つを理解していない人が多い。
しかし、これをきちんと理解することによって、トレードの精度は格段に上がること間違いない。
ここでは実需と投機のちがいとその特徴について説明した後、それがトレードでどう生きてくるのかを書いているので参考にして欲しい。
この記事に書いていること
- 実需と投機のちがい
- 実需と投機のとくちょう
- 実需と投機が相場にどのような影響をおよぼすか
下は2023年4月6日午前のドル円5分足チャートである。

アジアタイムの早朝、怒涛の円買いで円高が進行した。
そしてとうとう支持線であるトレンドラインを割って下落に勢いがつくかという場面。
しかし、東京市場がオープンしてしばらくした午前9時25分、突然誰かがカウンター的に買い上げたため、ストップロスが執行されてショートが踏み上げられた。
トレンドが反転するのかと今度はドテンしてロングで挑んだが、ショートカバーが一段落すると価格はまた垂れ下がった。
このような事例はFXトレードでは日常茶飯事だ。
いったい誰が相場を荒らしたのか?
まさか自分のポジションを狩り取るためだけに誰かがしたのかという陰謀論さえ考えてしまう。
しかし実はこの動き、毎日の東京時間午前9時55分に決定される「仲値」までの実需の動きさえ知っていれば予測がついていた。
実需
実需とは
実需とはかいつまんで言うと
企業等がおこなう決済のためのドル建ての取引
のこと。
まとめると下のとおり。
実需 ・・・ 実需とは実際の需要という意味
企業や個人が行う経済活動で為替レートに関係なく取引される
そして反対売買が行われない
為替レートに関係なく取引されるということが重要
つまり、1ドル100円であっても、1ドル150円であっても取引するということ
それから、例えば1ドル100円で買ったドルが110円になったからと言って利益確定や損切りのような反対売買はしない
たとえば
① 輸入業者は、商品を輸入する際にドルが必要となる。(ドルは基軸通貨だから国際市場ではドルを使って商品の売買がされている)
② そして商品、例えば石油を購入するためにに必要なドルは、1ドル100円であろうと150円であろうと調達される。
③ 調達されたドルは、相手企業に支払われるだけなので反対売買はおきない。
実需の種類
実需の種類はさまざまだが、FX取引においておさえておくべきは下の3つ
輸入企業
海外から商品を仕入れて国内で販売する業者。
商品の仕入れはドル建てで行う必要があるため、円を売ってドルを買う必要がある。
このため為替市場では、円安ドル高圧力となる。
輸出企業
国内の商品を海外に売却する業者。
売却のときに支払いを受けたドルはを国内で円に変える必要がある。
このため為替市場では、円高ドル安圧力となる。
資本取引
日本の企業が外国の企業に買収される、またはその逆の取引
日本企業買収の場合は円が必要になるし、海外企業買収の場合はドルが必要となる。
実需の行動原理
実需の取引は、企業の景気に左右される。
輸入企業の景気が良ければ仕入れが増えるし、仕入れが増えると仕入れのドル買いが増える。
逆に輸出企業の景気が良ければ売り上げがあがる。売上が上がればもらったドルを交換するためのドル売り円買いが増える。
2022年は1ドル150円を超える円安となった。
理由は世界的なインフレーション。
石油などの原材料を中心として物価がものすごく上がったので輸入企業は仕入れ価格がとても高くなった。
このためドルをたくさん調達しなければならなくなり円安ドル高圧力が増加した。
投機
投機とは
投機とは、自分たち個人FXプレーヤーや、金融機関、ファンドなどがする取引のことで、
ドルを安く買って高く売る
とか
ドルを高く売って安く買い戻す
というように、為替の値動きの差額で利益を得る。
投機・・・為替の値動きの差額で利益を得る
売れば買戻し、買えば売り直す反対売買が必要
投機の行動原理
投機は今後の景気動向の見通しによって、現在のドルが安いのか高いのかを判断して取引する。
投機は思惑によって行動している。
今後ドルが上がりそうなら安い今のうちにドルを買ったり、下がりそうなら売ったりする。
では、その思惑は何を根拠にしているのか。
例えば、世界的な金融ショックが起きたとする。
投機筋はこれを根拠にリスク回避と言って円を買う。

ただ、これは単なるアノマリーだよ。
実際に円が安全通貨だから資金を避難させる行動が起きるのかというとそうでもない。
投機筋が理由付けをしてそのような行動に出てるだけなんだ。
他には、アメリカの利上げを根拠に日米の金利差が開きそう(これも単なるアノマリー)と言って円売りドル買いをする。
短期的にはこのままドルを買い上げると損切りラインがあって、そこで大きく価格が跳ねがる可能性があるということなども根拠にしている。
ここまで、実需と投機のちがいについて理解できれば、ぜひとも為替の価格変動の仕組みについて説明した記事があるのでぜひとも参考にして下さい↓
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FX ポジションの偏り~投機筋のポジションが偏ると相場は逆に動く
FXにおける価格変動の仕組みについて説明。FXにおいて価格の決まり方は買えば買うほど上がるという一般的な考えは実は危険である。その理由について説明する。
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仲値までの実需の動き~仲値までは輸入によるドル買いが続く
実需と投機について分かったところで、見出しのチャートについての考察。
ここで前提となるのは、東京時間おおむね午前9時から仲値決定の午前9時55分までの間、輸入業者によるドル買い需要が続くということ。
これは東京時間の特徴で、この実需の動きはほぼ毎日同じ時間帯に出る。
この動きを利用したトレードを仲値トレードという。
午前9時から午前9時55分まで、輸入業者の円売りドル買い需要が淡々と出る
実需は反対売買のない買い切り玉。
為替の世界は投機が9割というが、買い切り玉である実需の力は大きい。
それでは考察してみる。

この日はアジアタイム開始直後から投機による円高への仕掛けが入った。
トレンドライン割れのストップをつけに行ったものだと想像できる。
チャートで見るとこの日の実需は午前9時25分以降に入った。
支持線をちょうど割れ、皆が崩れると確信して売り込んだところにカウンター的にである。
投機は反対売買が必要である。
すぐに支持線上まで戻したところで損切りが入った。
実需の買いは続き、次の水平ラインを上回ったところでさらに損切りが入った。
そして買い上げるだけ買い上げると、実需は引いた。
損失が出た投機はそこからもう一度売り込む力はなく、その後は方向感のない動きとなった。
以上のような流れになる。

実需と投機についてこれまで説明して来た。
これで相場がどのようにして動くのか分かってきたと思う。
実需と投機が理解できれば、ぜひとも仲値トレードにチャレンジして欲しい。
仲値トレードについては知りたい方は次の記事から読んでもらいたい。
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仲値トレード~実需の特性を利用して利食う
東京時間序盤に活発化する実需取引。それまでの投機筋のポジションを観察し買い切り玉でインパクトの大きい実需がこの投機筋にどう影響を与えるか考えてポジションを持つ。この勝率の高いトレード手法について解説。
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